では、就業規則を作成する意義を考えてみましょう。
 なぜ、わざわざ作るのでしょう?考え方は多種多様、主なもの4つ挙げてみます。

 

  • 1
    労働基準法上、作成、届出義務がある(常時労働者が10人以上の場合)
  • 2
    具体的な労働条件を明確にする(会社と従業員との間のルールブック作り)
  • 3
    万一の労使トラブルの解決根拠となる(「言った、言わない」の水掛け論防止)
  • 4
    労働契約法の成立(作るというより、見直す理由)

  ざっと挙げてもこれだけあります。それぞれについてみてみましょう。


  「1.」については、確かに法律通りなので書いたのですが、「労働基準法上義務があるので就業規則を作りましょう!」とは、私は日頃から言っておりません。

 なぜなら、労働基準法上義務があるから作らなければいけないとは、殆ど思わないからです(と、いいたいところですが、あまり大きい声ではいえません・・・)。


 むしろ、「合理的な内容の就業規則は労働条件になります。どうせ作るならば、その性質を上手に使って、労務リスクのない就業規則を作りましょう」という感じです。

 ですから、当然、10人未満の会社にも勧めています。

 

 ここで、事例を挙げて、ちょっと考えてみましょう。

 よくある事例で、病院や診療所のそばに、調剤薬局はよく設置されている話ですね。

 「株式会社○○薬局」という法人があり、調剤薬局を10店舗展開していたとします。各店舗については、すべて薬剤師5名と、パート事務員4名の合計9名ずつです。したがって、薬剤師、パートを含めた従業員は、「10店舗×9名」で、90名です。


 この場合は、労働基準法が定めた「労働者を常時10人以上使用する」にあたり、作成・届出義務を負うのでしょうか?

 答えは、「ノー」です。労働基準法で、「労働者を常時10人使用する」というのは、法人に対して「常時10人」ではなく、原則として各店舗、事業所ごとに「常時10人」とみるからです

 理由は、簡単です。

 労働基準法自体が、原則として各事業所(本店、支店、営業所、工場etc)に対して適用されるためです(ただし、ごく小規模なケースは、例外もあります。)。

 

 ですから、この法人は、10店舗全ての薬局で10人未満となるため、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出なくても違法ではありません。

 

 違法ではありませんが・・・、それでいいのでしょうか?法人全体としては、90人いるにもかかわらず、就業規則なしで、どうやって労務管理を行っていくのでしょうか?

 組織の労務管理を一律に処理するという面で必ず不都合が出てくるでしょう。

 

 

 「2.」については、日本は、用紙1枚程度で労働契約を交わし、その他の労働条件は就業規則によるというのが一般的です。慶弔休暇など会社独自の制度や服務規律などについて社長の熱い思いを書くのです(例えば、飲食店で茶髪が禁止だとか、髪の毛を清潔に保つとか、ひげを剃るとかについて。)。


 ちなみに最近の判例は、懲戒解雇をするにあたり、就業規則等に懲戒事由が列挙され、かつ周知されていて、初めて懲戒解雇処分が可能になると判断されています。
 

 要するに、「労働契約上の根拠を置け!」ということなのですが、労働契約を交わすときに、懲戒事由全て書き出す会社は、まずありません。むしろ、書面で交わさず口頭で契約するケースが社会の実態として圧倒的なのに、すべて口頭で「ウチの懲戒解雇事由は①・・・、②・・・、」というには、無理があるでしょう。

 

 

 「3.」は、労働契約や就業規則に定めがない部分については、法律に定めがない限り基本的には従業員は従う義務がないので、一度トラブルになると厄介です。時間や労力がかかる上、そこから「利益」など発生しません。逆に、就業規則に記載があれば、会社が救われることもあるのです。

 

 事後紛争型から事前予防型へシフトチェンジする必要性があろうかと思います。

 

 

 「4.」については、「労働契約法」という法律が法制化されたことでしょう。

 これはどういった法律なのかといいますと、労働基準法とは別に「民事上のルール」(会社と従業員と間のルール)を定めた法律です。その中で、「就業規則は労働契約となる」という趣旨の条文があります。これは、判例で確立したものがあり従来からわかっていたことではありますが、法律上明記することによって、周知、認識を図るものと思われます。
 むしろ、この法制化は、就業規則の必要性というより、「就業規則を見直す契機」と捉えたほうがいいでしょう。
 
 法律上明記されたことにより、会社の就業規則はおろそかにはできなくなってきました。

 なぜなら、就業規則がそのまま労働契約になるのですから。

 ある会社は、モデル就業規則をそのまま適用し、パートに慶弔休暇(有給)を与えるか与えないかでトラブルになりました。確かに慶弔休暇は存在したのですが、会社の考えでは正社員のみでした。最終的に会社は与える羽目になったのです。


 理由は、従業員・パートの定義が不明確で、慶弔休暇の適用範囲も正社員・パートの区分なく与えるような文言だったからです。


 慶弔休暇が貰えるか貰えないかは、パートさんにとっては重要な問題でしょう。会社を休んで給料が貰えるか貰えないかの問題だからです。


 慶弔休暇は、労働基準法に基づくものでなく、「民事」の問題です。与えるか与えないかは会社で自由に制度化できます(男女で日数が違うなど、公序良俗が問われる場合は別です。)。

 まさに、無料モデル就業規則が仇となった瞬間です。

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