さて、就業規則の必要性、見直しの契機については、だいぶイメージをつかんでいただけたのではないでしょうか?

 

 これから、社長に素朴な疑問を投げかけます。

 

 今後、就業規則を作成・変更する上で、どのようなことがカギを握ってくるでしょうか?

 


 ところで、公法上の義務、民事上の義務とかお話をしていますが、わかりやすく言えば、こういうことです。

 交通事故を思い浮かべてください。

 青信号になったので、Aさんは、交差点に進入したところ、左から明らかに違反となる猛スピードで信号無視をして交差点に進入したBさんと事故を起こしました。

 「スピードを守らなければいけない」、「信号を無視してはいけない」というのは、運転手が国に対して負っている公法上の義務ですから、警察が、Bさんが道路交通法違反をしたと判断すれば、送検等をし、検察が起訴をしたりするわけです。

 一方、「Aさんへの補償はどうする」というのが、当事者同士の問題、つまり、民事上の問題です。

 国家は「民事不介入の原則」というのがありますから、警察は、示談とか、和解の交渉は、「当事者で勝手」にやってくださいということになりますよね。

 

 労働問題に置き換えてみても、同じことなのです。

 「36協定を届け出る」、「定期に健康診断を行う」というのは、会社が国(イメージとして、わかりやすく言えば、第一線で活動している、「労働基準監督署」と考えてください。)に対して負っているものであって、「残業命令はどの程度有効か」、「健康診断を行ったから過労死しても会社に責任はないか?」というのは、結局のところ、民事の問題になるわけです。

 

 労働基準法は、民法の特別法という形で「刑事的な面」「民事的な面」の両面から規制を掛けています。

 もし、両者を「顕在的リスク」なものか「潜在的リスク」なものかに分けるとしたら、我々は間違いなく「刑事的な面=顕在的リスク」「民事的な面=潜在的リスク」であると考えています。

 

 

 刑事的な面は、「これをやっていなかったら、あなたの会社を処罰しますよ」という性格のものですから、極端な話、労働基準法をはじめ、各法律に書いてあることを守っておれば、それで処罰されること自体はないのであって、民事の面と比べて、対応は比較的容易でしょう。

 

 一方、民事的な面は、国家は基本的に関与するところではないので、対応が容易ではありません。

 

 賞与、退職金、休職制度、慶弔休暇等は、労働基準法要請されたものではありませんので、そういった労使の契約的事項については、「必ずこれ!」といった答えがあるわけでもなく、判例も極論すれば「このケースの事情の下では、結論はこうなる」というものですから、似たようなケースでも結論は異なってしまうことがありますし、社会通念、労働経済の状況等によって、刻々と変化をしていくものです。

 そして、何が起こるかわからないのも、これまた労働問題の本質なのです。

 

 

 ある会社の事例では、「年に1回、定期に会社指定の医師による健康診断を行う」旨、就業規則に定めていました。

 ところが、「自身に専門の主治医を!」(今では更に、「セカンドオピニオン」でしょうか?)という時代を反映してか、会社の指定する医師では検診せず、主治医による検診を受けました。


 問題は、そこから先です。


「個人で受けた検診の結果は会社に提出する義務があるのか?個人情報ではないのか?はたまた、本来会社でやるべき検診なのだから、費用は会社が持つべきではないのか?」

 

 労働安全衛生法上も個人の希望する医師の受診の場合でも、会社に書面を提出する義務がありますが、この辺も就業規則上明確にしておいたほうがいいです。

 「費用の負担は会社か?本人か?」というところは、会社が指定したにも関わらず、本人が希望して受診した場合は、費用は従業員本人の負担としても差し支えないと解釈されていますので、就業規則上明確にしておけばいいわけです。

 

 このような形で、日頃思いつかない、小さいことではあるのだけど、密かに存在している労務リスク(=潜在的民事労務リスク)を就業規則で排除していくのです。

 

 しかし、「潜在的な民事労務リスク」とはいっても、100%労務リスクを排除した就業規則など、この世の中には存在しません。そしてこれからも、存在することはありえません。


 それは、どんなに労働法に精通したベテランの弁護士の先生が作成しようとムリです。

 なぜ、そうなるのかは「民事の問題」の特性ですから、先に述べた通りです。

 

 では、どうすればいいのでしょうか?

 

 小さく生んで、大きく育てる。
 これしかありません。

 

 就業規則のスタートは、60%、70%でもいいですから、ちょっとした問題が発生し今後に備えるとき、法改正があったとき、「こういう場合はどうなる?」と、ふと考えたときを契機にして、少しずつ増やしていくのです。

 


 100%はムリでも、「99.9999・・・%」、最終的にはこの「9」という数字をいくつ増やしていけるかなのです。


 これからは労働法プラス「民事の部分」に目を向けて、判例法理を理解した「民事リスク回避型」の就業規則が望まれます。

 

 

 とはいえ、次の3つは注意しましょう。

  1.曖昧な表現は、最初から割愛しよう

    「ここでは何を言っているのかわからない。文脈上こういう捉え方もあるのでは?」

    と考えるべきです。

  2.「オフェンス」と「ディフェンス」を考えよう

    従業員の自主性とリスク回避を天秤にかけて、最後は、バランスも見ましょう。

    サッカーも、どちらか一方がよくてもダメですよね。

  3.自然体が実は一番かもしれません
    細かく記載しすぎるのも「絵に描いた餅」となりませんか?身の丈をあわせましょう。
    「徹底的に細かく」というのと、「具体的に」は違います。

 

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